2025年4月10日
秋田県における洋上風力産業の経済波及効果及び地域貢献調査について報告書を発表
- 秋田県は日本の洋上風力産業を牽引する地域のひとつであり、今後の更なる成長が期待される。
- ERM日本とOcean Energy Pathwayが実施した新たな経済波及効果分析によると、適切な施策と投資戦略に沿って、秋田県の洋上風力発電事業は県内で3,560億円の経済波及効果を生み出す可能性があり、その額は地元調達を促すさらなる対策によって5,700億円にまで拡大させることが可能だということがわかった。
- 秋田県における洋上風力産業および日本国内の行政、産業界、地域社会の連携と協力を強化することは、洋上風力発電のサプライチェーンを持続可能な形で発展させるために不可欠である。
本日、ERM(日本法人は、イー・アール・エム日本株式会社)とOcean Energy Pathway(OEP)は、秋田県における洋上風力発電事業の県内経済成長と雇用創出、など今後の地域社会発展に焦点を当てて分析を行った調査報告書を発表しました。
本調査の対象となった秋田県は、日本の洋上風力発電産業を牽引する存在として注目を集めている地域であり、地元サプライチェーンの社会経済効果を示すモデルケースの一つとなります。現在、秋田県では2つの港湾事業(合計容量140MW)が運転開始しており、浮体式実証事業および第1ラウンドと第2ラウンドで選定された事業者によって総計2,100MWが開発中です。また、400MWの海域が公募へ向けた準備段階にあり、秋田県は国内の再生可能エネルギー拡大を先導する役割を担っています。
本調査では、「現状で可能」と「潜在的に可能」の2つのシナリオにおいての経済波及効果とそれに伴う地元の雇用への影響を評価しました。その結果、現状では洋上風力発電事業によって約3,560億円の経済波及効果が秋田県にもたらされ、約34,000人の雇用を生み出されるということがわかりました。更に、県内サプライヤーの供給能力を高める投資を促すことで、それぞれ予定されているプロジェクトを通した潜在的な経済波及効果は最大約5,700億円、雇用数は52,000人に上ると推計されました。
本報告書では、洋上風力の経済的な可能性について秋田県が抱える人口減少という大きな課題の観点からも分析を行いました。秋田県は人口減少と高齢化が著しく、全国47都道府県の中でも最も深刻な状況にあります。報告書内で洋上風力発電が秋田県の地域活性化に果たす役割について強調しており、地域の所得向上と新たな雇用機会の創出で、洋上風力がより広範な社会経済変革のきっかけとなることが期待されています。
評価結果と提言
本調査では、ERM独自の洋上風力発電事業向けのコストモデル(LEnSTM)を用いて産業連関分析を行い、秋田県の8つの洋上風力発電事業の経済波及効果について詳細な分析と評価を実施しました。
この調査の結果に基づいた6つの提言は以下の通りです:
- 地元企業のO&Mへの最大限参入:地元企業が継続的に事業に参加できるよう、運転・保守(O&M)分野において地元企業の長期的な役割を強化する。
- 長期的なプロジェクトパイプラインの構築:今後の着床式および浮体式洋上風力事業に関する協議を進め、地元サプライヤーに対する確実性の確保と業界の長期的な成長を図る。
- 秋田県内のサプライチェーン構築に向けた連携の強化:事業者間の連携体制強化を促し、秋田県全体の相乗効果を高める。
- 県を超えた連携体制の構築:国際競争力のあるサプライチェーン構築のため、近隣県との連携を促進する。
- 人材育成:人口減少問題解決に不可欠な人材を育成・確保するための取り組みを推進する。
- 経済効果の最大化:洋上風力由来のクリーン電力を活用し、新たなビジネスや産業を誘致することで、発電事業以外の経済効果も増幅させる。
秋田大学 古林教授
“本報告書は、秋田県における洋上風力事業とその持続可能なサプライチェーン構築を通じて大きな地域経済波及効果が見込めることを実証した重要な成果です。”
ERMコンサルティングパートナー 柴田隆之
“本報告書は、日本での洋上風力のポテンシャルを生かし、その恩恵を地域社会に広げるという私たちの取り組みを推進する重要な一歩となりました。実践的な洞察を含む、我々の包括的な分析が地元企業の洋上風力産業への参入を促し、結果として地域経済の活性化に寄与することを期待しています。”
Ocean Energy Pathway 日本代表 倉科昭彦
“洋上風力は、日本のエネルギー政策における柱となり、社会面、経済面、環境面で重要な役割を担います。本調査は、洋上風力事業が及ぼす地元への経済波及効果および雇用創出の最大化に貢献し、地域サプライチェーンを構築するための施策を提言するものです。秋田県および日本国内で政府、産業界、市民団体間の協力が洋上風力産業の持続的な発展には不可欠であると考えます。”
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Ocean Energy Pathway のプレスリリースはこちら:
https://oceanenergypathway.org/insights/socioeconomic-impact-offshore-wind-akita-prefecture/
ERM Global のプレスリリースはこちら:
報告書はこちら:
日本語版
https://issuu.com/erm_japan/docs/_453528d38b3ed5?fr=sYzVlYjg0MjgxMzQ
英語版
https://issuu.com/erm_japan/docs/oep_erm_akita_offshore_wind_gva_report_e20250410
ERMについて
ERMは世界最大のサステナビリティを専門とするコンサルティングファームとして、戦略的支援と技術提供能力を独自に組み合わせたサービスを展開し、持続可能な事業の実現を支援しています。ERMは、発電事業者、投資家、行政、非営利団体、大規模なエネルギー消費者など、エネルギー転換の中心にいるクライアントに対し幅広いサービスを提供しています。またERMは、主要な再生可能エネルギー技術において数千のプロジェクトを手掛けた実績を有しており、再生可能エネルギーの発電、消費、投資、またはその全てのステークホルダーとしてクライアントが、迅速かつ柔軟に対応できるよう、豊富な専門知識でサポートを実現します。
OEPについて
Ocean Energy Pathway (OEP)は洋上風力産業の持続可能で野心的な開発を推進し、洋上風力をブルーエコノミーの一部として確立・発展させることを目指し活動する非営利団体です。OEPは、Global Wind Energy Council (GWEC) の取り組みの一環として始まり、Ocean Resilience and Climate Alliance (ORCA) よりの資金援助で2023年12月に設立されました。OEPは、10か国以上で洋上風力の成長を加速させることを目指しており、政府をはじめ、その他のステークホルダーに独立して中立な立場で専門的な支援を提供しております。2024年に日本、韓国、インド、フィリピン、ブラジルを優先地域として活動を開始しました。
ERM
Michelle Elias michelle.elias@erm.com
Ocean Energy Pathway
Navneet Khinda media@oceanenergypathway.org