インドでは、Chemicals (Management and Safety) Rules(CSMR、化学物質(管理及び安全)規則、いわゆるインドREACH)の策定が進められておりその動向が注目されていますが、BIS認証と呼ばれる既存の認証制度にも留意が必要です。これはBureau of Indian Standards(BIS、インド規格局)によって管轄される制度です。この制度では、認証対象製品の製造者は、国内/国外製造者を問わず、その認証を取得し、Indian Standard(IS、インド規格)等への適合性を示す規格マークを表示することが求められます。そうでない限り、インド国内で対象製品の製造、輸入、販売、流通等が認められません。また、インド国外の製造者は、その認証取得申請にあたってAuthorized Indian Representative(AIR、現地代理人)の指名が必要です。認証の対象は電池、電気機器、医療機器、自動車用品など多岐に渡り、また、拡大されてきています。2018年頃からは化学品も対象に含まれ始め、2024年2月5日現在では62の化学品(肥料・ポリマー・繊維を含む)がBIS認証の対象となっています。

 BIS認証制度には2つの制度が存在します。1つは「ISI認証スキーム」とも呼ばれるスキームIであり、製品安全の観点から設けられているライセンス制度です。ライセンス取得は製品ごと、製造拠点ごとに取得しなければなりません。ライセンスの申請にあたってはISへの適合性を証明するために事前試験が必要です。申請後にはBIS監査員による工場監査が行われます。複数の製造拠点がある場合にはその全ての拠点で工場監査が行われることになります。工場監査は1拠点あたり数日に及びます。加えて、別途BISにより試験が行われます。これらによりISへの適合性が確認されて初めてライセンスが付与されます。ライセンス取得フローは以下の通りです。

 もう1つは「強制認証スキーム」と呼ばれるスキームIIです。こちらは主に電気安全面をカバーする自己宣言制度です。工場監査はありません。BIS認定ラボで試験を行い、適合性を確認した後、BISに登録し認証を取得します。BIS認証制度の対象となる化学品は現在62製品あり、そのうち59製品がスキームⅠの対象です。化学品に関しては、より多くの注意をスキームⅠに注ぐ必要がありそうです。

 ERMでは2020年より日本企業様による化学品のBISライセンス取得をサポートしています。ライセンス取得にあたっては以下が重要です。

(1)事前方針決定と品質管理令のモニタリング

BISウェブサイトのFAQには、インド国外の製造者の場合、申請書提出からライセンス取得まで4ヶ月程度かかると記載されていますが、ERMの経験では4ヶ月を大きく超える期間が必要でした。一方、認証対象製品を追加するQuality Control Order(QCO, 品質管理令)の施行は、基本的に公布から180日後となっています(ただし、その後施行先送りのQCOが出された例あり)。期限内にライセンスを取得するためには、スピーディーな対応が必要です。そのため、インド向けの自社製品のうち、どの製品が対象となった場合にライセンスを取得すべきかについて事前に方針を決定しておくことが推奨されます。また、常にQCOをモニタリングしておくことが推奨されます。

(2)ISへの適合性に関する事前確認

ライセンス申請にはISへの適合性を示すデータが必要となります。しかしながら、ISの要件の中には、日本では一般的でなく、分析自体が難しいものもあります。インド向けの主要製品であって、すでにISがあるものについては、事前にISへの適合性を把握し、あるいは適合させるために何が必要なのかを把握しておくことが推奨されます。

(3)工場監査を意識した申請書作成

ライセンス取得申請後、申請書はBISによってレビューされます。ただし、このレビュー担当者は必ずしも工場監査員と同じではありません。工場監査では新たな質問等が出され、その場で資料の追加・修正を求められることもあります。工場監査を意識し、工場操業・品質管理の実態を申請書に的確に反映することが重要です。これらの対応にあたってはERMの経験を是非ご活用ください。

 ERMでは、上記を踏まえたBISライセンス取得サポートが可能です。ライセンス取得のご要望またはライセンスに関するご質問等がございましたら、遠慮なくご相談ください。

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