PFAS(ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルアルキル化合物の総称)は、その非常に安定している性質から私たちの生活の中で幅広い用途に使用されており、事実、最も身近に使用されている物質の一つではないでしょうか?その多岐にわたる用途、難分解性がゆえに、環境・人の健康への影響が懸念され、昨今ではPFAS規制の動きが非常に活発になっています。

海外におけるPFAS規制状況
EUではストックホルム条約でPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)及びPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の製造、使用、輸出入を制限したことから始まり、現在では、長鎖有機ふっ素カルボン酸(C9-21 PFCAs)の追加が検討されている状況です。REACH規則では、2023年2月に欧州化学品庁(ECHA)が10,000以上の物質を対象としたPFAS規制案を提出しており、2023年6月からリスクアセスメント委員会及び社会経済分析専門家委員会による協議が開始されていますが、本案が採用されるのは、数年後(2027年頃)とされています。

米国環境保護庁(US EPA)では、2021年10月18日に2021年から2024年の期間における「PFAS Strategic Roadmap」を発表しました。これには、PFASへの暴露、毒性、生体への影響等に関する研究開発、人や環境へ影響を及ぼすような濃度のPFASの大気、土壌、水中への流入防止、汚染浄化の3つの目的を掲げ、年毎に達成すべき具体的な政策も含まれています。当該ロードマップの最後の年となる今年の後半には飲料水中のPFAS濃度のモニタリング・分析方法の更新、またバイオソリッド中のPFOA/PFOSのリスクアセスメント手法の確立を目指しています。

ニュージーランドおよびオーストラリアでは、2020年2月、「Intergovernmental Agreement on a National Framework for Responding to PFAS Contamination」の付属書である「PFAS National Environmental Management Plan (NEMP)」において、PFASよる環境汚染の管理および汚染防止に対するガイダンスを提示している。このガイダンスは、随時更新される文書としており、現在、3回目の改定のためパビリックコンサルテーション行われています。

飲料水及び地下水中のPFAS基準
2020年に改正された「Drinking Water Directive」(2020/2184/EU)では、2023年1月12日までにすべてのEU加盟国が「sum of PFAS:0.1μg/L」(20のPFAS合計値)、もしくは、「PFAS total: 0.5 μg/L」(ペル及びポリフルオロアルキル物質の合計値)の基準を順守すべく、各国の法規制に組み入れること、そして2026年1月12日までにすべてのEU加盟国の飲料水でこれらの基準を満たすことを要求しています。

USに関しては、先月4月10日に、6つのPFASに対する国レベルの飲料水規則「National Primary Drinking Water Regulation(NPDWR)」を発表しました。これは、US内でのPFASに関する法的強制力のある初めての基準であり、PFOA、PFOSに関しては最大許容濃度4.0 ng/L、その他の物質は10 ng/L、PFHxS、PFNA、HFPO-DA及びPFBSのうち2つ以上の混合物質については、ハザード指針を1(単位なし、ハザード指針算出方法:FACT SHEET (epa.gov))と、厳しい基準を設定しています。

EUおよびUSが人への影響を懸念し規制を強めている一方、世界保健機関(World Health Organization、WHO)の2022年に改定した飲料水水質ガイドライン(Guidelines for Drinking-water Quality)では、PFOSおよびPFOAのそれぞれ暫定基準を100 ng/Lに留めています。これは、飲料水中のPFASの処理コストの上昇を懸念している結果であるという意見もあります。

国内の規制状況
国内では、化審法においてPFOA、PFOSのほか、今年6月に改正化審法施行令でPFHxSを含む製品の使用・輸出入が禁止されます。また、環境省では、2019年より公共水域(表層水)及び地下水のモニタリングを行っており、全国各地からPFASが公共水域等から検出されています。現在、国内の飲料水の暫定目標値は50 ng/L(PFOS及びPOFAの合計値)とされており、地下水の暫定目標値も同じく50 ng/Lで設定されています。水質汚濁防止法においては、2023年にPFOA及びPFOSを指定有害物質に追加し、事故や非常事態等が発生した場合、直ちに流出防止等の措置が講じられ、自治体に報告することが求められています。現在、国内では2つの専門家会議により、WHO及び他国の法改正の動向を参考にPFOA・PFOSの水質環境基準健康項目の設定、土壌中のPFOS・PFOA・PFHxSの測定方法や基準値等を検討、検証中ですが、今後の具体的な規制内容やタイムラインについては明確にされていない状況です。

海外で急速にPFASに関する法規制が厳しくなっている中、国内企業においても、ビジネスリスク・レピュテーションリスクマネジメントの観点及び海外投資家等からのプレッシャーなどから、意図的もしくは非意図的なPFAS含有製品の製造・使用の可能性の把握、従業員や製品使用者への安全配慮、出資先・サプライチェーンの管理、生物や環境への影響について対策を、今後、さらに強く求められていくのではないでしょうか? ERMでは、グローバルに展開するネットワークを活用し、グローバルスタンダードに基づいた以下のサポートが可能です。PFASに関してご質問、お困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

◆リスクマネジメント:潜在的PFASリスクの洗い出しおよび対応の提案
◆ 法規制順守:国内外における法規制の適用性およびビジネスへの影響の評価
◆ M&Aデューデリジェンス:サプライチェーン、バリューチェーン、オペレーションにおけるPFASに関連するリスクの洗い出しおよびその影響評価、代替案等を含む対策立案支援
◆調査・浄化対策:汚染物質の拡散・移流モデリング(挙動解析)、リスク評価、汚染調査および浄化対策の実施

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